公的年金受け取り開始年齢について、個人の判断で75歳まで延ばせるようにする検討を行う考えがあことに厚生労働大臣が言及しました。
現在は65歳まで受け取り開始年齢を引き上げている最中で、個人の判断で70歳まで遅らせることが可能となっていますが、さらに延長可能とすることによって富裕層の受け取りを遅らせることが期待できます。
これによって社会保障費の膨張を少しでも抑える狙いがあると思われます。

現在の公的年金の受け取り開始年齢は、国民年金が65歳、厚生年金については、男性が2025年度、女性が2030年度までに段階的に65歳まで引き上げられている途中になります。

日本人男性の平均寿命79歳ですが、77歳のイギリスやドイツでは受け取り開始年齢の引き上げをすでに決定しています。
イギリスは2046年までに現在の65歳から68歳に引き上げ、ドイツも2029年までに65歳から67歳まで引き上げるとのことです。
政府内にはこうした主要国並みに受け取り開始年齢を一律で67~68歳まで引き上げるという案がありますが、同大臣は、国民の反発が非常に大きいことが予想されると慎重な見方を示しています。

70歳代まで働く人が増加しているという現状を踏まえ、受取年齢の選択肢を増やした方が現実的との考え方が政府内には根強くあると思われます。
ただ、この背景には選択引き上げから一律引き上げへの移行の思惑もあるものと思われます。
実際、一律引き上げの議論も行わないと、選択だけでは社会保障や財政の行き詰まりの解決には効果が小さい、と指摘する専門家もいるようです。

寿命が長くなる中、年金を受け取り始めてから死亡するまでの期間は確実に伸びています。
現役世代の負担を抑えるためにも、受け取り開始年齢の引き上げに関する論議は避けては通れないものとなっています。

ただ、受け取り開始年齢引き上げには企業による高齢者の雇用を促進させる政策も必要となります。
それは、企業が自主的に高齢者の雇用を行うような政策であることが必要であり、現状のように半ば雇用を強制するものであると、若い世代の雇用機会を奪ってしまうことにもなりかねません。
引き上げ論議が本格した場合、その際に政府が打ち出す施策が注目されます。